東京藝術大学体育研究室

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2013.6.20
ことば(2)「練習で120%の力を出さないと、試合で力を出すことはできない」

「練習で120%の力を出さないと、試合で力を出すことはできない」
  愛媛県立松山商業高校野球部監督 一色俊作

 松山商高の監督として第51回全国高校野球選手権大会を制した一色俊作さんが4月24日、75歳で亡くなった。第51回大会は1969年(昭和49年)。僕もちょうど高校3年の夏、決勝での青森三沢高校と松山商業の息詰まる熱戦を昨日のことのように覚えている。テレビの前で、延長18回の末、0対0での引き分けの攻防に興奮した。殊に、18回を投げ抜いた三沢のエース太田と松山のエース井上の投げ合いは今でも語り継がれるほどの名勝負だった。

 その決勝戦。松山商業は15回裏、1死満塁のピンチでしかもストライクなしの3ボールに追い込まれる。次がボールになればサヨナラ負けの場面。しかしエースの井上さんは動揺しなかったという。それは普段の練習の仕方に秘密があった。
 投球練習の仕上げの段階になると、一色監督は井上さんの横に立ち、場面を設定して投げさせたそうだ。「0対0の9回裏、2死満塁、ノースリーから」。重圧をかけて、捕手が構えたところに直球10球、カーブ5球を決めないと終われない練習もしたという。
 エースに、「他の選手の2倍練習して信頼を得ないと、野手は体を張って守ってくれない」。そして、「練習で120%の力を出さないと、試合で力をだすことはできない」が監督の口癖だったという。

 そういえば、先日のサッカーW杯出場を決めた豪州戦から一夜明けた会見場での本田圭佑選手のコメントは、それまでの和やかな空気に釘を刺した。「それぞれが自立した選手になって、いかに個の力を高められるかが今後の課題」。本田の言葉は挑発的だった。選手の名前を上げながら要求を突きつけ、「仲良しグループでは勝てない」と警鐘を鳴らす。若くして一人ヨーロッパに渡った彼は、気が置けない関係性の中に安住する怖さをわかっているのだろう。

 「練習が居心地のいい場所とか、やりやすい場所になってはいけない」とはスポーツに限らず、どの領域でも指摘される内容である。漫然と練習していても、心理的にも物理的にも重圧のかかる本番(試合)では、いわゆる、「決定力不足」を招く。本番での失敗の原因は普段の練習の仕方にあるということだ。

 「練習で120%の力を出せないと、試合で力を出すことはできない」。一色さんは、練習から選手に厳しい言葉を投げて重圧を与えたのだ。そしてそれはまた、本番を常に想定した中での競争や緊張感があってこそ、人は成長できるという教育者としての確信であったと思われる。

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ことば(2)「練習で120%の力を出さないと、試合で力を出すことはできない」

「練習で120%の力を出さないと、試合で力を出すことはできない」
  愛媛県立松山商業高校野球部監督 一色俊作

 松山商高の監督として第51回全国高校野球選手権大会を制した一色俊作さんが4月24日、75歳で亡くなった。第51回大会は1969年(昭和49年)。僕もちょうど高校3年の夏、決勝での青森三沢高校と松山商業の息詰まる熱戦を昨日のことのように覚えている。テレビの前で、延長18回の末、0対0での引き分けの攻防に興奮した。殊に、18回を投げ抜いた三沢のエース太田と松山のエース井上の投げ合いは今でも語り継がれるほどの名勝負だった。

 その決勝戦。松山商業は15回裏、1死満塁のピンチでしかもストライクなしの3ボールに追い込まれる。次がボールになればサヨナラ負けの場面。しかしエースの井上さんは動揺しなかったという。それは普段の練習の仕方に秘密があった。
 投球練習の仕上げの段階になると、一色監督は井上さんの横に立ち、場面を設定して投げさせたそうだ。「0対0の9回裏、2死満塁、ノースリーから」。重圧をかけて、捕手が構えたところに直球10球、カーブ5球を決めないと終われない練習もしたという。
 エースに、「他の選手の2倍練習して信頼を得ないと、野手は体を張って守ってくれない」。そして、「練習で120%の力を出さないと、試合で力をだすことはできない」が監督の口癖だったという。

 そういえば、先日のサッカーW杯出場を決めた豪州戦から一夜明けた会見場での本田圭佑選手のコメントは、それまでの和やかな空気に釘を刺した。「それぞれが自立した選手になって、いかに個の力を高められるかが今後の課題」。本田の言葉は挑発的だった。選手の名前を上げながら要求を突きつけ、「仲良しグループでは勝てない」と警鐘を鳴らす。若くして一人ヨーロッパに渡った彼は、気が置けない関係性の中に安住する怖さをわかっているのだろう。

 「練習が居心地のいい場所とか、やりやすい場所になってはいけない」とはスポーツに限らず、どの領域でも指摘される内容である。漫然と練習していても、心理的にも物理的にも重圧のかかる本番(試合)では、いわゆる、「決定力不足」を招く。本番での失敗の原因は普段の練習の仕方にあるということだ。

 「練習で120%の力を出せないと、試合で力を出すことはできない」。一色さんは、練習から選手に厳しい言葉を投げて重圧を与えたのだ。そしてそれはまた、本番を常に想定した中での競争や緊張感があってこそ、人は成長できるという教育者としての確信であったと思われる。