東京藝術大学体育研究室

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2013.7.16
ことば(3)「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」

「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」(柳宗悦)

日本民芸館の館長就任1年 深澤直人さん(プロダクトデザイナー)
東京新聞 7月6日(夕刊)より

 

 東京駒場公園(前田侯爵邸跡)に隣接し、閑静な住宅街の一角にある日本民芸館に、僕も時々訪れる。瓦葺きの木造2階建ての建物に一歩足を踏み入れると、懐かしい昭和の匂いがする。木製の陳列ケースに並ぶさまざまな焼物。温かな色彩の染物や、どこかユーモラスな掛け軸。和風で統一された室内は時間がゆっくり流れ、自然と心が落ち着く。
 展示品の名称は小さな板に手書きであり、解説的な文章はない。知識の前にまず無心にものと向かい合うべきだという柳 宗悦の信条に基づくもの。柳は品物の伝来、由緒、銘の有無などにこだわらず、自己の直観で美しいと信じるものを収集していったという。収蔵品は一万七千点にのぼる。
 深澤直人さんが日本民芸館を最初に訪れたのは30歳のころ、米国のコンサルティング会社に勤めるため渡米する直前だった。「日本人として、ガツンと自分の中に不動の美学みたいなものを入れておきたい願望があった」。柳の目が選り抜いた諸国の手仕事が並ぶなか、ある言葉に圧倒されたという。
 

「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」

 館長となり、「デザイナーの自分と違和感を感じたことはない。むしろ、見るたびにこういうものが世の中にあったのかと見とれ、同時に無我というか意図のないものを感じる」。生活の中で生み出され、普通の中にある無作為の美に「衝撃が走る」と語る。
 「僕らが創造を目指すものは、普通のものになるであろうということを想像してやらなければならない。民芸館には普通だったんだけど、それを超えたパワーのあるものが集まっている」。最近、館を訪れる若者の姿も目立ち始めたそうだ。「世の中のいろんな概念が増え、何かを探している。そのもとになる安心を見に来る。ものであってものでなく、人が求めている心というか。正しい道みたいな。自然の中に入っていくのと良く似ている」

「デザインの究極は用の美。余計なエゴがなくなること」と深澤さんは言う。
「これはもの作りの本質。残るものはすごい。柳宗悦は極みを知っていた。そこを見抜き、永久に美を込めようと考えていた」
「普通とは最先端の美!」。だからこそ、日本民芸館に行くたびに新しい発見があるのだろう。

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ことば(3)「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」

「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」(柳宗悦)

日本民芸館の館長就任1年 深澤直人さん(プロダクトデザイナー)
東京新聞 7月6日(夕刊)より

 

 東京駒場公園(前田侯爵邸跡)に隣接し、閑静な住宅街の一角にある日本民芸館に、僕も時々訪れる。瓦葺きの木造2階建ての建物に一歩足を踏み入れると、懐かしい昭和の匂いがする。木製の陳列ケースに並ぶさまざまな焼物。温かな色彩の染物や、どこかユーモラスな掛け軸。和風で統一された室内は時間がゆっくり流れ、自然と心が落ち着く。
 展示品の名称は小さな板に手書きであり、解説的な文章はない。知識の前にまず無心にものと向かい合うべきだという柳 宗悦の信条に基づくもの。柳は品物の伝来、由緒、銘の有無などにこだわらず、自己の直観で美しいと信じるものを収集していったという。収蔵品は一万七千点にのぼる。
 深澤直人さんが日本民芸館を最初に訪れたのは30歳のころ、米国のコンサルティング会社に勤めるため渡米する直前だった。「日本人として、ガツンと自分の中に不動の美学みたいなものを入れておきたい願望があった」。柳の目が選り抜いた諸国の手仕事が並ぶなか、ある言葉に圧倒されたという。
 

「民芸館の使命は美の標準の提示にある。その価値基準が「健康の美」「正常の美」にある。美の理念として之を越えるものはない」

 館長となり、「デザイナーの自分と違和感を感じたことはない。むしろ、見るたびにこういうものが世の中にあったのかと見とれ、同時に無我というか意図のないものを感じる」。生活の中で生み出され、普通の中にある無作為の美に「衝撃が走る」と語る。
 「僕らが創造を目指すものは、普通のものになるであろうということを想像してやらなければならない。民芸館には普通だったんだけど、それを超えたパワーのあるものが集まっている」。最近、館を訪れる若者の姿も目立ち始めたそうだ。「世の中のいろんな概念が増え、何かを探している。そのもとになる安心を見に来る。ものであってものでなく、人が求めている心というか。正しい道みたいな。自然の中に入っていくのと良く似ている」

「デザインの究極は用の美。余計なエゴがなくなること」と深澤さんは言う。
「これはもの作りの本質。残るものはすごい。柳宗悦は極みを知っていた。そこを見抜き、永久に美を込めようと考えていた」
「普通とは最先端の美!」。だからこそ、日本民芸館に行くたびに新しい発見があるのだろう。